England Lost (ft. Skepta)/Mick Jagger 訳詞・和訳

汚れたイギリス国旗とBrexit
ローリング・ストーンズのボーカル、ミック・ジャガーが先月末に新曲を発表しました。England Lost、Gotta Get A Gripの2曲で、ソロ名義での新曲リリースは実に10年ぶりです。

政情変化による不安をテーマにしているというこの2曲。特にEngland Lostは、「イングランドは負けた」という衝撃的なタイトルと、グライムMCのSkeptaとのコラボで話題をさらっています。


“移民の話なんかもううんざりだ”
“スーツ姿の男たちがすべての栄光を奪う”



England Lost (featuring Skepta)
イングランド・ロスト フィーチャリング・スケプタ


(Mick)
負けだ 負けだ 負けだ 負けだ

俺はイングランド戦を見に行った でも負けちまった
誰もが言ってた 俺たちみんなカモにされたと
俺はイングランド戦を見に行った でも負けちまった
負けだ 負けだ
雨の中に立たされて面白くなかった
俺たちは皆 大声で叫び 文句を言った
大した試合じゃなかったぜ
俺はずぶ濡れになっちまった
とにかく 来たくなんかなかったのに

俺はイングランドを見に行った でも負けちまった
裏に回ってみたけど 「出ていけ」なんて言われたぜ
俺はイングランドを見に行った でも負けちまった
俺はイングランドを見に行った でも
俺は見に行った
俺は行った
俺は

これじゃ話が違うぜ 失点だ
家に帰って ジョイントでも吸おうか
とにかく 行きたくなんかなかったんだ
俺はイングランドを探しに行った でもなくなってた
椅子の裏にでも落っことしたんだろう
俺の想像力はなくなりつつあるんだろう
移民の話なんかもううんざりだ
入ることもできない 出ることもできない
実のところ それが全てなんだろうな

俺はイングランドを探しに行った でも
俺はイングランドを探しに行った でも
俺はイングランドを探しに行った でもなくなってた

負けだ 負けだ 負けだ 負けだ

俺はリスボンにもローマにも女がいた
これからは国内に引っ込んでないとな
シャッターに鍵をかけろ ドアを封鎖しろ
ロンドンがシンガポールみたいになってくぜ
あんなにホットじゃないけどな
やつらは姿を現さない 文句を言ってた評論家ども
本物の情熱もない 国民の恥さらし
幼稚すぎるのに 年を食いすぎてる
褒めたりけなしたり 意見をコロコロ変えやがる
俺はそう思うね

(Skepta)
真実の 布教だ
これはデジャヴ そっくり丸ごと前に見た
シーズンは違っても スコアはおんなじ
皆がおまえを晒し首にしたがってる
前の日には おまえを褒めたたえてたのに
新メンバーの加入は禁止
すでに人員過剰
いまだに続く住み処をめぐる争い
だから俺はそれをつまみ上げ 下に置いて 元の場所へ捨てた
俺はマコーレー・カルキンみたい ホーム・アローンだ
窓のところまで来て石を投げてくれ
だって俺は電話なんかで話したくない
同じ問題が拡大する危険地帯
何も変わらない 同じ筋書き
同じ汚れた沁み 汚れた服の上
路上の人々がすべての仕事を引き受ける
そして スーツ姿の男たちがすべての栄光を奪う

(Mick)
イングランドを探しに行った
イングランドを探しに行った
イングランドを探しに行った
イングランドを探しに行った でもなくなってたんだ



新曲England Lostは、「EUからの離脱を嘆く」、「離脱風刺」、「離脱をやゆ」等々、さまざまな表現でメディアに紹介されました。

こういった見出しだけを眺めると、ミック・ジャガーはEU離脱反対派なんだと思われるかもしれません。実際の歌詞も、今回のイギリスのEU離脱、いわゆるBrexit(ブレグジット)を、サッカーイングランド代表の敗戦になぞらえた内容になっています。

ところがミック・ジャガーは、EU残留・離脱をめぐる国民投票前に、離脱のメリットについてコメントしていた著名人のうちの一人でした。

YouTubeのSky News(6分35秒あたり~)によると、彼は今年4月の時点でEU離脱について意見を求められ、こんなふうに答えています。

“自分自身への影響に限って言うと、EU離脱によって大きな変化があるとは思わないね。イギリスという国にとっては、短期的には不利益をこうむるだろう。長期的には、20年ぐらいのタームで見れば、結果的に利益になったってことがわかるんじゃないかな”

こういうコメントを見ると、ミックはやっぱり計算高いというか、機を見るに敏というか、知的な人だなあと感じます。そして彼は何よりも、エリザベス女王からナイトの爵位を受けた誇り高い英国人です。イングランドの敗戦に失望し、将来への不安にさいなまれる歌詞の内容は、あくまでも現状の混乱を客観的にえがいたものじゃないでしょうか。

いきすぎた経済至上主義と、各国の文化に対する配慮のないグローバリズムが生み出した「拡大する危険地帯」。そこからいち早く抜け出すべく舵を切ったイギリスの未来を、ミック・ジャガーは冷静に見据えているようです。

グライムとヒップホップの違いがよくわからないCarrotですが、このソリッドな音作りにおいては融合しているようだし、コラボとして成功しているんじゃないでしょうか。よくわからんけど。


通常バージョンのMVはこちら。モノクロ映画仕立ての凝ったつくりです。


こちらのMVに主演しているルーク・エヴァンスは、「ホビット」シリーズや「美女と野獣」への出演で有名な俳優です。ゲイであることをカミングアウトしていることでも知られています。

楽曲自体は、あれ?Voodoo Loungeかなんかにこんな曲なかったっけ?と、それこそデジャヴを感じさせるミック節。ブルースハープの入り方とかもう、はいはい、ミックミック。

なので、Skeptaのいない通常バージョンは、気の抜けたコーラ的な物足りなさを感じます。ついでに言うと、ビル・ワイマン脱退以降のストーンズは、ダシの入ってない味噌汁的な……もうこの辺でやめときます。


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Carrot

Author:Carrot
ジョニー・キャッシュを愛する洋楽ファン。自己流の訳詩、好きな音楽の話、日常の出来事を気ままに綴ります。
★当ブログに掲載している訳詞は、個人的な楽しみのための引用であり、商用利用や配布を目的としたものではありません。また、歌詞の和訳には誤訳・誤字が存在する場合があります。営利目的の転載および複製はご遠慮ください。個人的な楽しみの範囲であれば、ご自由に利用くださって構いません。その際は当ブログへのリンク及び引用元の表記をお願いいたします★

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